発達障害が話題に上がると、最初に連想されるのが【ADHD】という単語ではないでしょうか?ニュースでも耳にしますし、一般的な子育て関連の情報にも載っていますよね。
でも、実際にADHDって何のことなんでしょう?似たような言葉、【ADD】とは何か違うんでしょうか?
ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHDという言葉は、注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)の略です。
不注意、多動性、衝動性の3つの症状が現れます。
そんな症状、誰でも経験するんじゃないの?と思われるかもしれませんが、ADHDの患者は年齢に不釣合いなほど症状が重く、社会的活動に支障をきたす場合があります。
ADHDを発症する時期は?
文部科学省の定義によると、7歳までにADHDの症状が現れるとされています。しかし、アメリカが2013年に発表した「精神障害のための診断と統計マニュアル」では診断年齢が12歳まで引き上げられました。
それだけ、ADHDと判断しづらくなっているのかもしれませんね。
ADHDは、言語・認知・学習といった分野の発達に関して現れてくる症状なので、未発達の時期(乳児期、幼児期)には診断することが出来ないんです。
以前までは子供に発症する障害でしたが、最近ではその症状に悩まされる大人も多くいます。
症状1.不注意
症状の第一が【不注意】が多くなることです。
忘れ物をしたり、当たり前のことに気づくことが出来なかったりします。一般的な不注意と違った点は、ADHDによる不注意は症状が改善しないことです。
不注意で何かミスを犯したときに怒られると、その経験から「次はミスをしないでおこう」と思い改善することが出来ますよね。
しかし、ADHDを抱えている患者の場合はその改善が出来ないんです。何度も不注意によるミスを繰り返していることで、学校の先生からも「わざとこんな事してるの!?先生を困らせたいの!?」なんて言われてしまうことも・・・。
ADHDの患者には悪気は無くても、症状を理解できていない周囲からしてみれば「なんで、いうことを聞けないの?」と感じてしまうようです。
- 忘れ物、無くし物が多くなる
- 何をしていたか忘れる
- 集中が出来ない
- 逆に、興味のあることには集中しすぎて周りが見えない
- 片付け、整理整頓が出来ない
- 人の話を聞くことが出来ない
このような症状が続くようならば、ADHDを疑ってもいいかもしれませんね。
症状2.多動性
ADHDを抱えている子供は、落ち着いてじっとしていることが出来ません。
これは不注意の症状とも重なりますが、人の話を聞くことが極端に苦手です。学校で先生の話を聞いていても一人だけ立ち上がってウロウロと移動してしまったり、他の事に興味を持ってノートに落書きを始めてしまったりします。
小学生にもなると、教室でじっとして授業を受けることが当たり前になっていますよね。でもADHDを抱えている子供にはそれが出来ません。「なんで、じっとしていられないの!」と怒られても、本人にもその理由が分からないんです。
【授業中は静かにしなければいけない】と習っていたとしても、それが出来ません。「喋りたい!」と思ったときにはすでに喋り始めてしまっているんです。
基本的に同じ姿勢でいること、静かにしていること、周りに合わせることが苦手になります。そのせいで、周囲から浮いた存在になってしまうこともあります。
- 落ち着いて座っていられない
- 体を動かしてしまう
- とてもおしゃべり
- 静かにすることが出来ない
こういった症状が目立つようならば、一度ADHDの検査を行なってみるといいかもしれませんね。症状が分からないままだと、子供が辛い思いをしてしまうかもしれません。
自閉症を抱えている患者にも、多動性の症状が発症する場合がありますね。自閉症に関してはこちらで詳しくご説明しています。
症状3.衝動性
3つ目の症状は【衝動性】です。
多動性に繋がる部分があるのですが、衝動性を持っている子供は自分が意識した事を判断する前に行動に移してしまいます。
「今、これをしても大丈夫かな?」「これを先にしておいた方がいいかな?」なんて考えることがありますが、ADHDを抱えている子供はこういった判断が出来ません。
そのため、「○○がしたい!」と思ったら頭よりも先に体が動いてしまうんです。順番に並ぶことがあっても、興味があるものには順番を待つことが出来ません。
特に小学生くらいの年頃だと、お友達同士のケンカが絶えないかもしれませんね。自分がちょっとでも気に触ることがあれば暴力を振るってしまいます。その結果、相手がいたい思いをする、自分が怒られるなんて事は考えられません。
【自分が今したいこと、それが何より1番優先】ADHDを抱えている子供は、このように考えてしまうことが多々あります。
- 順番が待てない
- 気に触ることがあったら、すぐに手が出る
- 会話のキャッチボールが出来ない
- 一方的に自分だけ喋りだす
- 他人の邪魔ばかりする
こういった症状が現れると、小学校や保育園でも問題になるかもしれませんね。
我が家の息子も、他人に暴力を振るうようになってきたので少し問題です・・・(゚A゚;)
ADHDの3タイプ
ADHDと言っても、それぞれの症状で3つのタイプに分類されます。
また、人によってその症状の現れ方には個人差がありますし、性別によっても症状が変わってきます。
タイプ1.多動性-衝動性優勢型ADHD
ADHDの症状には、不注意、多動性、衝動性の3つがありましたが、最初の【多動性-衝動性優勢型】はその名の通り、多動性と衝動性の症状を強く発症しているケースです。
周囲の子供とは少し違った行動が多くなったり、クラスの中でも一人だけ言うことを聞けなかったりします。また、みんながじっと授業を聞いているときに一人で走って教室を飛び出してしまったりします。
自分がふと思ったことを衝動的に話し出してしまったり、その場に不適切なことを発言してしまったりもします。
特に、男の子に多く現れるタイプのようですね。
タイプ2.不注意優勢型ADHD
タイプ1の多動性-衝動性優勢型とは異なり、不注意の症状が強く出ているタイプです。
不注意優勢型の子供は、注意力が散漫になりやすく、何事に対しても集中することが苦手になります。授業を聞いていても、集中して聞くことが出来ずにノートに落書きをして遊び始めてしまったり、お友達に話しかけてしまったりします。
しかし、不注意優勢型の子供は、自分が興味のある分野に関しては特に集中力を発揮します。絵を描くことが好きになれば、周りのことは何も気にせずにずっと絵を描き続けます。一つのおもちゃが好きになれば、一日中そのおもちゃで遊んでいることもあります。
忘れ物や、無くし物が増えることも症状の一つなのですが、小さな頃にはまだ判断が出来ないため、大人になってから不注意優勢型のADHDと診断される方も多いようです。
また、集中力に関しての障害は特に女の子に多く現れることが多いようです。
タイプ3.混合型ADHD
混合型は、不注意・多動性・衝動性の3つの症状を発症しているタイプです。
基本的に、多動性-衝動性優勢型ADHDの患者は、不注意による症状は出にくくなりますし、不注意優勢型に分類される方は多動性を感じさせることはあまりありません。
しかし、混合型ADHDの患者は全ての症状を発症しますので、忘れ物が多くなりますし、周りの言うことが聞けず、一人で暴れだすこともあります。衝動的に大声を出して、周りから人が離れて言ってしまうこともあるようです。
意外なことに、ADHDと診断された患者の8割はこの混合型ADHDです。症状が多く出るために早期発見しやすいタイプになります。
しかし、症状がアスペルガー症候群と似ていることからADHDと明確に診断するには時間がかかるケースもあります。
アスペルガー症候群に関してはこちら
>>ASD(自閉症スペクトラム)、アスペルガー症候群に関して
ADDとの違いは多動性
ADHDとよく似た障害に、ADDというものがありますね。何が違うんでしょう。
ADDとは注意欠陥障害の略称です。ADHDは注意欠陥多動性障害でしたね。つまり、ADHDはADDに比べると多動性のある障害が多く含まれています。
最近では、どちらも一緒にして考えられることが増えてきましたが、根本的な症状としては違いがあるんですね。
ADDに関しては、こちらで詳しく説明しています。
乳児期に見られるADHDの特徴
先ほども紹介したように、ADHDの診断を受けるには7歳になっている必要があります。それ以前だと、そもそも発達していないので診断することが出来ないんです。
しかし、ADHDの患者には乳児期から共通して見られる症状があるようです。
なかなか寝付けない
ADHDと診断された患者は、乳児期の頃に寝付かない子供だったケースが多くあります。
寝付かない→ADHDになる
のではありません。一般的に、22時~02時の間は成長ホルモンが分泌されるからしっかりと寝ないといけないよ!と言われる事がありますよね。
この時間帯に寝れていなかったから、ADHDになってしまうわけではありません。ADHDは先天的なものですので、子育てが原因で起きることはありません。
赤ちゃんが寝付けないというのは、何か他の事に対して興味を持っているからです。ADHDの子供は、いろいろなことに興味を持ち、そのことに対して必死になります。
例えば、おもちゃが気になったり、天井の模様が気になりだしてしまうと、どれだけ眠くても我慢してそのものを見ていようとすることがあります。
そのため、ADHDの赤ちゃんは寝つきが悪くなってしまうようですね。
視線を合わせない
赤ちゃんと言っても、話しかけたときにはしっかりと目線を合わせてくれますよね。これは、「この人の言うことを聞こう」と考えてくれているのではありませんw
「あ、何か音がしている。口が動いてる」と感じて親の顔を見てくれるんです。そして、「話をしているのはこの人か」と気付き目線を合わせてくれるんですね。最初の頃はそんな感じなんです。
そこからだんだんと慣れていき、親が話しかけると反射的に目線を合わせてくれるようになります。
しかし、ADHDを抱えている赤ちゃんは視線を合わせてくれません。コミュニケーションを取ろうと思っても、全く違うところを見ていることがあります。
これは、親の話しかけよりも面白いことが別にあるからです。おもちゃが気になる、親の服が気になる、耳が気になるなど他に意識がいってしまっているんですね。
抱っこされるのを嫌がる
ADHDを抱えている赤ちゃんは、抱っこされることを嫌がります。
抱っこされる=親の腕の中に入る=動けない
となるからですね。赤ちゃんでも、自分で動きたい、遊びたいという意思があります。そのため、親に拘束されてしまう抱っこを嫌がります。
ADHDの患者は、じっとしていること、静かにしていることが出来ません。この症状は赤ちゃんの頃から現れているのかもしれませんね。
ADHDの子供との接し方
ADHDを抱えている子供は、言う事を聞いてくれませんし、落ち着きがありませんし大変ですよね。保育園、小学校へ行っても色々な面で支障をきたしてしまうことがありますね。
そこで、ADHDを抱えている子供に対しては接し方を少し工夫してあげましょう。
1.才能を見つける
ADHDを抱えている子供は集中力がありませんが、自分の好きな分野・得意な分野に関しては異常なまでの集中力を発揮します。
そのため、子供が好きなこと・得意なことを見つけてあげ、子供が思いっきり集中できる環境を整えてあげましょう。その才能が大人になっても発揮されれば、すごい天才になっているかもしれません。
芸術面で天才と呼ばれている方の多くは、ADHDであった可能性が高いようですね。自分の好きなことに思いっきり打ち込むことが出来るので、他の人が嫌がる練習・修行も本心で楽しく行うことが出来るようです。
このように、子供の才能を発見し伸ばしてあげることがADHDを抱えている子供に対して一番のサポートかもしれませんね。
2.褒める
ADHDを抱えている子供は多動性や衝動性を発症したとしても、そのことが【悪いこと】とは認識できていないケースがあります。
悪いことをしているわけではないのに怒られる、「何が悪いんだろう?ママは僕のことが嫌いなのかな?」と感じているかもしれません。
そこで、ADHDの子供に対してはしっかりと褒めてあげるようにしましょう。出来ない事を叱るのではなく、出来る事を褒めた方が子供の成長には役立つのかもしれませんよ。
3.順序立てて行動し、不安を軽減する
子供の興味があること・したいことを聞き、好きなことから順番にさせてあげましょう。ただし、【しなければいけない事】もルール化して決めておき、順番にしっかりと行動してもらいましょう。
ルールを守ることの重要性を教えてあげることで、周囲に合わせた行動を摂ることもできるかもしれませんね。また、しっかりとルールを守れたときには思いっきり褒めてあげましょう。
順番どおりに行動することで、スケジュールが守られることを感じられれば子供の不安も軽減することが出来ます。不意打ちや、急な変更などは行なわず、子供の決定を最後までスムーズに行なわせてあげましょう。
4.自覚してもらう
これは、一番難しい内容かもしれません。子供が悪いことをしたときなどは、しっかりとその内容を自覚してもらいましょう。
- 何が悪かったのか?
- なぜ、このようなことになったのか?
- どうするべきだったのか?
こういった内容を子供にしっかりと説明し、理解してもらいましょう。
ただし、この時に感情的になって叱ってしまってはいけません。あくまでも状況を説明して自覚してもらうことが目的です。
ADHDを抱えている子供は、他人の話を聞くことが難しいので、自覚してもらうことは大変かもしれません。そのため、この点に関しては子供の成長、周りの環境に合わせてゆっくりと行なっていきましょう。
症状が当てはまっても100% ADHDとは言えない
ここであげた症状に多く当てはまる場合もあるかもしれません。しかし、この症状に当てはまったからと言って絶対にADHDだとは言えません。
落ち着きが無かったり、衝動的になったり、言うことを聞かなかったり・・・そんな症状は子供の成長過程には必ず付いて回る症状です。
「最近、すぐに暴れだすけどADHDなんじゃないかしら!?」なんて疑いだすのは良くありませんね。ADHDに関して気になることがあれば、小児科や支援センターへ相談してみるのがいいでしょう。